やはりトレジャーハンターなどというものを目指しただけあって、どんなことでも器用にこなすヤツだと思う。
……………もっとも、器用だということがトレジャーハンターの必須資質なのかどうかは
まったくもって俺にはわからないんだが。
「……よっ、と。おし!完成〜♪」
ちゃららららっちゃらーん、なんていうふざけた効果音を自分で付けながら、九龍は出来あがったモノを頭上高く掲げた。
「どうよ甲ちゃん?」
得意げにニッと笑う顔は宝物を自慢するガキ大将のようで、けれど実際のところ
自慢するだけのことはある完成品に、皆守は呆れたように肩を竦めた。
「よくもまァあんなもんでこれだけのものが作れるもんだな。感心するぜ」
自分としては素直に褒めたつもりだったのだが。
九龍は途端にぶーっと頬を膨らませて口を尖らせて、こう言った。
「甲太郎ってばつめてーの!」
「―――――はァ?なんだそりゃ?」
まったくもって意味がわからない。
怪訝な視線に気が付いたのか、九龍はやれやれとでも言いたげに溜息をつく。
なんだろうな………とてつもなくくだらない展開になる気が、ものすごくするんだが。
「だから〜、もーちょっとこう『おお、スッゲーじゃん!』とか
『さすがだ九龍……俺には真似できねぇぜ……』とか、あるじゃん!?わかるだろ友よ!?」
「ねぇよ。むしろ今この瞬間に俺はお前とは赤の他人だ」
案の定の雲行きにアロマを呑んでさっさと立ち上がれば、石と木の棒で作ったばかりの手斧を片手に
今度はよよよと泣き崩れる。
「ひ……っ、ひどいっ!ワタシにあんなことまでさせたくせに、飽きたらポイだなんて……!!」
「人聞きの悪いことを言うなッ!!」
いつものながらのおふざけについ入れなければいいツッコミを入れてしまい、皆守は
自己嫌悪に陥ってぐしゃぐしゃと頭を掻いた。
…………そもそも、だ。最初とは微妙に(どころかほとんど180度近く)話がズレている。
ただこれはもういつものことなので、ツッコんでいてはキリがないと諦めているだけだ。
「大体なんだよ、あんなことって?」
苦虫を噛み潰したようにそう問うてみる。
いくら考えても自分と九龍の間に「あんなこと」呼ばわりされるような艶っぽいことは一度もなく
(男同士で艶っぽいも何もあったもんじゃないとは思うが)、どうせただの冗談かネタだろうと、そんなふうに
考えていまだ屋上のコンクリに直に座り込んだままの級友を見やる。
すると九龍は性悪そうな眼で皆守を見上げてニヤリと笑い、
「オレ、女の子よりも男を優先して押し倒したのって初めて♪」
手斧をクルリと一回転させてそう言った。
はたして器用なくせに鈍い奴なのはどちらなのか(笑)