「早口言葉」
「ねー甲ちゃん。東京特許許可局って十回言ってみ?」
「ハァ?」
いつものようになんの前振りもなくおかしなことを言い出した九龍に対して、皆守はまず
実に面倒臭そうな顔を向けたあと、こちらもやはりいつものようにあっさりと答えた。
「やなこった。なんだって俺がそんな無意味な行為に付き合わなきゃならないんだ」
そうすると九龍が口にする言葉決まっていて、
「そっか、ゴメンな。そうだよな、ダルダル星人の甲ちゃんに早口言葉なんて
出来もしないことをやらせようとしたオレが悪かったよ。忘れてく…」
「待て、誰がダルダル星人だ。人をその辺の宇宙人みたいに言うんじゃない」
「んじゃあ十回」
はっきり言って皆守は、安い挑発にノせられるタイプじゃない。
鼻で笑ってあしらう方が絶対いつもの彼のはず―――――なんだけども。
「東京特許許可局、東京特許許可局、東京特許許可局」
アロマパイプを銜えていた口がムキなって件の早口言葉を刻みはじめるあたり、普段は不相応に冷めてみえる皆守も
年相応の男子高校生なのかもしれないと、こういう時にふと思う。
「東京特許許可局、東京特許きょきゃきょ、」
「あ。間違えた」
「…………………………ちッ!」
指折りカウントしていた九龍がそう言うと、苦虫を噛み潰したような顔をして皆守は不機嫌そうに頭を掻いた。
だが、彼の不幸はいつもその先にある。
それを確認してから視線を上げて九龍はニヤリと、
「はーい今日の昼メシは甲太郎の奢りってことで!イエー!!ヤッタゼやっちーッ!!!」
「―――ってちょっと待て、九龍ッ!!聞いてないぞそんなの!?」
諸手を上げてハイタッチを交わす二人の傍らで皆守が自身の無駄な抵抗に気がつくまで、あと1分。
サイトオープンから今までずっとがんばってくれていた拍手お礼SS。
4月からだから実に4ヶ月ですか・……。
………………………せめて拍手だけでもガンバって更新したいものです………………………。
(土下座)