◆◇ 昔 も 今 も ◆◇◆
ハーフコートの左から右へ、一直線に加速度のついたパスが通る。
「オラァ!」
後ろから走り込んできた火神の一言と共に、今まさに放物線を描こうとしていたシュートは敢え無く叩き落とされた。
「もー、なんでジャマするんスか。せっかくの黒子っちからのパスだったのに!」
着地した途端に始まったかしましいやり取りを聞きながら、黒子はフゥと大きく息を吐いて、額の汗をTシャツで無造作に拭う。
「なんですか青峰君?」
一瞬よろめいた足元をなんとか堪えて振り返れば、黒子とは対照的に額にうっすらと汗を掻いただけの青峰が、黒子の返事に呆れた顔で溜息を吐いていた。
「なんですか?じゃねーだろ。バテバテのくせして。ちっと休憩しろ」
元相棒の反論に適当な相槌を打つと、青峰は肩に置いていた手をそのまま反対側まで伸ばした。 促されるままに青峰と共にベンチへ戻ると、今度は緑間が不機嫌そうに青峰を睨み付けていた。
「何故俺が黄瀬と1on1などしなければならないのだよ」
至極当然とばかりにそう言うと、目の前の緑間ではなくまだコート内にいた黄瀬が声を上げる。
「青峰っち酷い!」
すでに青峰の言葉が事実だと証明しているようなやかましさに、緑間は眼鏡の位置を直しながら、フーッと溜息を吐く。
「………まったく、仕方がないのだよ」
茶化すと同時に身を翻してコート内に駆けていった高尾を、緑間が怒ったように追って行ってしまい、途端にベンチには青峰と黒子だけが取り残される。
「緑間君には申し訳ないことをしました」
歯に衣着せぬ言い分に噴き出す青峰を見上げて、ベンチに座った黒子は首を傾げる。
「……前が見えないんですが」
言うが早いか無造作に掛けられたタオルで髪を拭かれて、その力強さに黒子は一瞬顔を顰めた。
「青峰君、痛いです」
ポンと頭を叩いてそう念を押されて、一瞬ベンチの裏側に置いていた自分の鞄にチラリと視線を向けたものの、黒子は掛けられた白いタオルを被ったまま仕方なく頷く。 今、頭の上に被せられているタオルは青峰のものだ。 懐かしい出来事に一瞬言葉に詰まってしまったけれど、青峰が親切でしてくれた行為をあえて無碍にすることもないと思い、黒子は素直に汗を拭ってから、そのまま青峰のタオルを肩に掛けた。
「青峰君」
まだ春というには少し肌寒い季節だ。
「タオル、ボクので良ければ使ってください」
言いかけて途中で気がついたらしい。黒子の肩に掛けられたタオルを見て、バツが悪そうに視線を逸らした青峰に、やはり無意識だったのだと黒子はほんの少しだけその口角を上げた。
「あー……やっぱ借りる」
照れ臭いのか、憮然とした表情で伸ばされた浅黒い手に、黒子はそっと自分のタオルを手渡した。
とりあえず初書きでした。 「オイ、あれ」「はいどうぞ」みたいな(笑) ちなみに火神と黒子は新婚夫婦だと思います。 ………イヤイヤ、わたしのマイ・ベスト・カップル☆は青黒です。そうですから!!
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