◆◇ 相 棒
と は ◆◇◆
バスケはもともと攻守の交替が目まぐるしいスポーツだが、ストリートとなれば尚更だ。
しかも黒子以外の3人ともが生粋のPFでは、2対2での黒子の体力的消耗は普段より激しかっただろう。
シュートを阻止された黄瀬との言い合いの最中に、気がつけばコートから消えていた黒子と青峰を追って緑間や高尾と入れ違いに戻ってきた
火神は、タオルを肩に掛けてベンチで一息ついている相棒に声を掛けた。
「黒子、大丈夫か?」
少しぼんやりしていたのか、声を掛けられて顔を上げた黒子は一瞬の間を置いてコクリと頷く。
「はい。すみません、ゲームが中途半端になってしまって」
「そんなこといいって。それより、なんか欲しいもんあるか?」
正直なところ、水分補給に愛飲しているポカリスエットが欲しかったのだが、自分をはるかに上回る運動量だった火神を使い走りにするのも
悪いし、何よりゲームを中断させてしまったことが申し訳なくて、黒子は僅かな逡巡のあと小さく首を振った。
「大丈夫です。少し休めば回復しますから」
一度座ってしまったせいで今は立つことが少々億劫だったが、初めから後ですぐ近くの自動販売機に買いに行こうと思っていたのだ。
当初の予定通りまずは体力を回復させることに専念すればいいと、そう考えていた黒子の目の前に突然ドリンクボトルが現れた。
それを持つ手の先を視線で辿れば、そこにはかつての相棒がいて、目を丸くして自分を見上げている黒子に何か違ったかと
怪訝そうな顔をする。
「んだよ、これだろ?」
「え、あ……ありがとうございます」
ホラ、と押し付けるようにスクイズボトルを渡されて、黒子はとりあえず礼を言ったが、青峰は何故かそのままじーっと黒子を見つめていた。
無言の要求はつまり、とりあえず飲めということなのか。たしかに水分を摂取したかったのは事実なので、ありがたく蓋を開けた。
―――――それをコートの中から眺めていた高尾が、ベンチの方を指差して緑間に尋ねた。
「光ってのは相棒っつーか……彼氏?」
青峰の『こいつのことはなんでもわかってるんだよ』的な態度は傍目にも明らかだ。
とはいえ現在の公式な相棒は同じチームでクラスも一緒の火神だし、根っから優しい性分なので存外2人は友人としての仲も良く見える。
それが火神には欠片もそんなつもりがなくとも彼氏っぽく、自然と構図は元彼VS今彼の様相を呈していて、高尾の指摘は的を得ていた。
だが、3人の関係などにまったく興味のない緑間は眉間にシワを寄せて、不機嫌そうにそっぽを向く。
「俺が知るわけないのだよ!」
「違うっス!!なんでそうなるんスか、高尾っち。あんな野獣みたいな人らが黒子っちの彼氏なわけないじゃん!」
「いやいや、アレどーみても今彼と元彼の修羅場っしょ」
ベンチに座ったまま我関せずとばかりに休んでいる黒子の横で、やたら図体のデカい2人がギャーギャーとやりあっている。
黒子と彼氏2人の温度差がどうにも激しい気はするが、たしかに修羅場といえば修羅場に見えた。
「火神、テメーはアッチで緑間達と遊んでろよ。テツならオレが見ててやるから」
「別にいいって言ってんだろ。お前こそ、バスケしてくりゃいいじゃねーか。今日のメンツなら本気でやれんだろ?」
「あー、なるほどな。テツがいねーと負けちまうか?」
「なんでそうなるんだよ!?」
「かはっ、わめくなよ。図星か?」
「てんめ……っ、ゼッテー負かす!!」
「……もうキミ達、あっちで決着つけてきてくださいよ」
溜息を吐きながらポイと放られたボールを受け止めて、青峰が口を尖らせる。
「んだよ、冷てーなテツ」
「黒子、絶対手出すなよ」
「出しませんから、ホラ、あっち側半面空いてますし、思う存分どうぞ」
2人が自分を気遣ってくれるのは本心からだとしても、結局最後は1on1になるのだから、ダシにされる黒子としては内心またですかと
言いたい気分だ。しかもそこになぜかわからないが黄瀬までやってきた。
「黒子っち考え直して!彼氏なら断然オレがおすすめっスよ!!」
「………とりあえず丁重にお断りします」
「黄瀬ウゼェ!こっち来んなっつったろーが!」
「いや彼氏ってなんだよ。意味わかんねーこと言うなよ黄瀬」
そうして3人全員からバッサリ斬られても、黄瀬はめげなかった。
「とりあえず2対2の続きっス!!今度は黒子っちとオレ対青峰っちと火神っちで!!」
黄瀬がそう叫ぶと、間髪入れずにベンチの黒子からは丁重に断られ、両側からは青峰と火神に思い切り頭をはたかれた。
「やっぱ好きになるタイプって似るのかねぇ?なー真ちゃん」
「だから知るわけないと言っているだろう。人の話はちゃんと聞くのだよ高尾」
光サンドってとっても大好きなのですが、ウチのかがみんは
フツーに友人としてとても親切で優しい相棒になってしまいますナゼだ。。。